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大阪地方裁判所 昭和58年(わ)2664号 判決 1983年9月30日

裁判所書記官

東森隆一

本店所在地

大阪府泉大津市西港町七番二〇号

吉野紙管株式会社

(右代表者代表取締役吉野喜治郎)

本籍

大阪府泉大津市本町九二番地

住居

同市下之町四番一号

会社役員

吉野喜治郎

昭和五年五月九日生

右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官鞍元健伸出席のうえ審理して次のとおり判決する。

主文

一  被告人吉野紙管株式会社を罰金八〇〇万円に、被告人吉野喜治郎を懲役一〇月に、各処する。

一  被告人吉野喜治郎に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人吉野紙管株式会社(以下「被告会社」という。)は、大阪府泉大津市西港町七番二〇号に本店を置き、紡織用紙管の製造及び売買等を目的とする資本金一、〇〇〇万円(昭和五六年一二月一日現在)の株式会社であり、被告人吉野喜治郎は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人吉野は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入れを計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和五四年七月一日から同五五年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五、四七五万二、八三九円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五五年九月一日、大阪府泉大津市二田町一丁目一五番二七号所在の所轄泉大津税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一、八二三万五九五円でこれに対する法人税額が六四一万二、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額二、一〇二万一、四〇〇円と右申告税額との差額一、四六〇万八、八〇〇円を免れ

第二  昭和五五年七月一日から同五六年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二、二八五万三、一七三円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五六年八月三一日、前記税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が欠損の三九六万二、〇三二円で納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額八六三万八二〇〇円を免れ、

第三  昭和五六年七月一日から同五七年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二、五六〇万三、一五七円(別紙(三)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五七年八月三一日、前記税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二七五万七、四八一円でこれに対する法人税額が七二万三、一〇〇円でぎる旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額九六八万九、三〇〇円と右申告税額との差額八九六万六、二〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一、被告人吉野喜治郎の当公判廷における供述

一、同被告人の検察官に対する供述調書

一、収税官吏の同被告人に対する質問てん末書一〇通

一、前田正義の検察官に対する供述調書

一、収税官吏の村山正史、中西英途、吉野清、吉野雅子、吉野冨美子、前田正義(二通)、吉野恭子及び貫野義信に対する各質問てん末書

一、山口忠信、土井正之、江頭喜一郎、中野和則、小林一郎、西川義一、永田一雄、秦仁、東山隆治(二通)、井上鉄哉各作成の「確認書」と題する書面

一、収税官吏作成の査察官調査書一三通

一、大阪法務局泉出張所登記官作成の法人登記簿謄本

一、被告会社作成の法人税確定申告書謄本三通

一、収税官吏作成の脱税額計算書三通

一、押収してある領収証一枚(昭和五八年押第七四三号の1)、角印一個(同押号の2)、ゴム印三個(同押号の3)54/6期確定申告控等一綴(同押号の4)、55/6期確定申告書控等一綴(同押号の5)

(法令の適用)

被告人吉野喜治郎の判示第一の所為は、行為時においては昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の法人税法一五九条一項に、裁判時においては右改正後の法人税法一五九条一項に該当するが、右は犯罪後の法令により刑の更があったときにあたるから、刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示第二、第三の各所為は、いずれも右改正後の法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人吉野喜治郎を懲役一〇月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

被告人吉野喜治郎の判示各所為は、いずれも被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、判示第一の所為につき右昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項により同じく改正前の同法一五九条一項の罰金刑に、判示第二、第三の各所為につき右改正後の法人税法一六四条一項により右改正後の同法一五九条一項の罰金刑に、各処せられるべきところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告会社を罰金八〇〇万円に処することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 金山薫)

修正損益計算書

自 昭和54年7月1日

至 昭和55年6月30日

<省略>

<省略>

修正損益計算書

自 昭和55年7月1日

至 昭和56年6月30日

<省略>

<省略>

修正損益計算書

自 昭和56年7月1日

至 昭和57年6月30日

<省略>

<省略>

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